SuitCase Studies: The Production of a National Pastのメモ †
ディラー+スコッフィディオ(Diller + Scofidio)著
(Visite Aux Armées: Tourismes De Guerre = Back to the Front : Tourisms of War
F.R.A.C. (1994/1)
ISBN-13:978-2950594006
pp. 32-109.所収)
- p. 33.
- 遠隔技術よって獲得される無制限の移動の自由は、従来型の旅行を時代遅れにすることができるか?
- p. 34.
- リモコンを手にして、出費をせずに世界中を旅できる。いつでも魅惑的で、危険がない。
- 遠隔技術が可能にした流動的移動性と次第に均質化していく世界における移動性の無益さにもかかわらず、国際観光はもっとも早く成長した産業のひとつであった。
- 従来型の旅行が高い価値を保ち続けているのは、テクノロジカルな世界がもたらす影響と反対の作用を及ぼすからである、と論じられている。
- モダニティの特徴の一つ。→本物といったものは失われているが、これは他の文化や過去において回復される。(Jonathan Cullerによる)
- 旅行者は本物を求め、観光旅行がこの欲望を増大させる。
- p. 35.
- 「まさに」「実際の」「オリジナルの」「本物の」といった形容詞。
- アメリカの観光旅行→架空の地域に正真正銘の過去を作り出す→伝統。
- 旅行者のまなざし→事物は決して本物として期待されない。それ自身のサインとして読まれ、理想化され、しばしば苛立たされる。
- p. 36.
- 不適切な部分が削除された過去の構築は生きた歴史と呼ばれる。未来の結末に対する影響を持たない受身の観察者として旅行者が当時に戻ることが可能なのは、この過去である。
- 時代の再現の空間において、旅行者は問題なく窃視者の役割を受け入れる。
- グリーンフィールド・ビレッジ:ヘンリーフォード博物館に併設されたアメリカ、ミシガン州にあるテーマパーク。
- 時間の再演と地理の再演。
- ありそうにない並置→エジソンの実験室、ヘンリー・フォードの生家、ライト兄弟の家
- pp. 37-38.
- 年代順の時間、連続的な空間の限界を無視して、旅行者の時間は可逆的となり、空間は伸縮的となる。その結果、時間と空間─歴史と地理─は交渉可能になる。
- アリゾナ州ハバスのロンドン橋
- テネシー州ナッシュビルのパルテノン神殿
- 鉄筋コンクリート造の原寸大レプリカ。
- そのパンフレットの言葉→オリジナルより完璧である。
- 唯一ポルティコの部分が変更された。→本物のパルテノン神殿のように険しくするとすると観光客が登る気がなくなるのを恐れたため。
- レプリカは再現のように、その手本としたものを観光が完全にすることを可能にする。
- テキサス州のアラモヴィレッジ(Alamo Village)
- 映画「アラモ」を撮るために作られたセット。映画の題材とした「アラモの戦い」の実際の現場から100マイルの場所に作られた。
- アメリカのコンパクトな歴史においては、実際の場所とハリウッドでのそれらの対応物は記念物としての地位を分け合っている。
- p. 39.
- 期待されている物語が維持されている限り、複製としてのオリジナルの代用品は観光客に対する不安の色を見せない。
- ケンタッキー州にあるAbraham Lincoln Birthplace National Historical Park
- リンカーンの丸太小屋が新古典主義の建物の中に安置されている。
- リンカーンはこの丸太小屋には、再現されたものなので実際には住んではいないが、彼の地位の低いルーツを表している。
- 国中にリンカーンの丸太小屋のクローンがある。
- 伝統的倫理的歴史学の見せかけを真剣に受け止めることに対する観光客の嫌気が、本物を生産するということにおける、観光の広い許容度を可能にする。
- すべての歴史が構築物と仮定するならば、本物が問題だと再考するとき何が危機に瀕しているのか、だれの本物か→限界と区別が設定される実践。それらを可能にする価値の相対化されたシステムによる実践。←問われる必要がある。
- p. 40.
- 観光にとっての最もアウラのあるもののひとつである家→本物と本物であることの確認の役割を果たす。
- 旅行者の覗き見趣味の凝視に提供される全ての平凡な細部→博物館学的な人工物、展示のための学芸員的な管理と鑑識。
- Lyndon Johnson(リンドン・ジョンソン)(1908-1973)の少年時代の家。
- 歴史家がジョンソンによる故意の歪曲を修正しようとしたが、彼の妻は「公式の歴史」から彼の自己イメージを守るための裁判で勝利した。
- ジョンソンの「自伝的」な家は公に提示されることが、事実の再構成より重要であると主張した。
- p. 41.
- フロイト「旅の楽しみの大部分は家族から、特に父親から逃れたいという幼少期の欲望の実現にある。」
- 家がいやになったら旅行をして、ホームシックになったら帰ってくるという循環。観光旅行はこの循環を妨げる。
↓
- 観光旅行は見慣れないものを取り除いて、空間を見慣れたものへと飼いならす。→チェーン系のホテルやレストラン。
- ヴィデオ・テクノロジーは出発することなく行く(going without leaving)というパラドックス。観光旅行はこれを反転した見えないテクノロジーであり、行くことなく出発する(leaving without going)というパラドックス。
- p. 42.
- 旅行者の実際の家は観光旅行の地理学において唯一確実なもの、固定した参照点である。→旅行が本物かどうか確認されなければならないのはこの場(site)においてである。
↓
- 本物かどうかの説明責任は、スナップ写真やビデオテープにおいて果たされる。
- カメラは観光旅行と視覚(vision)を結びつける。観光旅行は景色(sight)に支配されている。観光客は景色を見るため旅行する。→観光旅行は空間を飼いならす。視覚もまた飼いならす。
アトラクションは、景色を安全のなかにフレーム化する装置。目障りなものを見えないゾーンに追いやり視覚を浄化する。
- p. 43.
- 視ることの制御(scopic control)は大規模な自然の場を操作する。たとえば国立公園を通る道路からの眺め(view)では、工業地帯やゲットーを覆い隠す。→連続する眺めは唯一シャッターチャンス(公式の眺め、前もって思い描いていたのと一致する場所)で中断される。
- しばしば、景色(sight)は期待されるイメージに似るように努力しなければならない。
- ナイアガラの滝では絵葉書のイメージに合わせるために、水力発電供給のための水量について協議されている。
- 絵葉書は変化しやすいものの景色(sight)の固定した対象物となる。
- ナイアガラの滝が作り出し、そして作り出される表象再現のネットワーク。
- p. 44.
- 補足説明→景色(sight)に備わっているものの不完全性を埋め合わせる(取って代わって、付け加える)。標識の増殖。標識がなくては景色は自身に注意を向けさせられず、見られることができず、それゆえ景色であることができない。
- 観光旅行の構築物は、景色と構成材(絵葉書、バッジ、標識、パンフレット、ガイド付きツアー、お土産、スナップ写真、そしてレプリカと再現など)という参照物の交換の運動のなかにある。
↓
- 多数のものがあたえられると、旅行者の視覚が多くの表象再現の中で唯一のものと考えられる。→「本物をめぐる弁証法」の消去。
- pp. 45-46.
- スーツケーススタディ
- 50個の同一のサムソナイトのスーツケース。アメリカ50州の各州の観光アトラクションのケーススタディ。公式、非公式。絵、文字。2次元、3次元。新しい物語へと分析され統合される。ベッドと戦場の2種類から選べれている。
- 誰もいないベッドと兵士のいない風景には現前性が浸透しているが、この現前性は表象の体系における直接性の置き換え受け入れている。
- ベッド(家のアトラクション)→家庭的なフィールドへの身体の登録という、もっともプライベートなサイト。家の中に置かれている物はパブリックな外観の再生産において物語的役割を演じる標識である。
- 戦場→標識、記念碑を通して観念的にコード化された風景。
- ベッド(家のアトラクション)、戦場→絵葉書(イメージと言葉が反転し、パブリックとプライベートが崩壊する領域での複合体である人工物)
- スーツケーススタディ→中央に水平に絵葉書。スーツケースの上半分に文字。絵葉書の説明部分が反射。下半分に地図、イメージ。絵葉書の写真部分が反射。
- 高度に時間-空間の錯乱した自由な遊びとして構造化されたものをもたらす、観光客(sightseers)と観光事業者(sightmakers)間の半フィクションである暗黙の約束。→本物と偽物の区別を邪魔し、最終的には、歴史が変わりやすい構造物であることを露呈させる。